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『はだしのゲン』だけじゃダメ ネトウヨもブサヨも納得する学校図書館に置くべき漫画はこれだ!

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『はだしのゲン1』(中央公論新社)
 島根県松江市の小中学校図書館が漫画『はだしのゲン』を閲覧制限していた問題で、26日、同市教育委員会が各校への制限指示を撤回。さまざまな議論を呼んだ騒動は、これをもって一区切りした。  ここまで議論が熱くなったのは、長きにわたって『はだしのゲン』が、手塚治虫の『火の鳥』と並んで、学校図書館にも置いてあるマンガ=すなわち「よいマンガ」のごとく扱われてきたことにある。中沢啓治氏は『はだしのゲン』を、原爆の恐ろしさを伝える意味もあって、子どもが泣き出すようなホラーマンガとして描いたという話も聞いたことがある。少なくとも「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載された第4巻までは、ホラーマンガといってよいだろう。左翼系雑誌に掲載された第5巻以降も、批判者たちが言う“間違った歴史と偏向”はほんの少しで、むしろ凄惨な暴力と、下品さが目立つ(作中でゲンが「タンタンタヌキのキンタマは~」と歌ってたり)。  そんなマンガを、平和教育の聖典のごとく取り扱ってよいのか? そもそも、学校図書館にマンガを配架すること自体は妥当なのか? それらの議論は常にあってよいはずである。  行政の一機構にすぎない教育委員会に「見せろ」「見せるな」の意見を叩きつけるよりも、開かれた場で意見をぶつけ合えばよいのである。本来、インターネットなどのテクノロジーの発達によって、そうした議論の場を設けることは簡易になっている。にもかかわらず、賛成反対ともに行政に圧力をかけるとか署名を集めるとか、小手先の手法を用いる。これ自体が間違っているのである。  筆者は、ぜひこれを契機に学校図書館にも市民の議論を喚起するようなマンガを配架し、児童生徒がメディアに対するリテラシーを身につける契機にもなればと考える。  そこで、ぜひ学校図書館に置くべきマンガをセレクトしてみた。もちろん、これは完全なものではない。どういう目的でどんなマンガを配架すればよいか、読者のみなさんも、ぜひ考えてほしい。 ■『アドルフに告ぐ』手塚治虫  手塚治虫の代表作のひとつとしても挙げられる作品。学校図書館によっては配架しているところも多い。ご存じの通り、ヒトラーユダヤ人説をもとに、戦争の悲惨さと矛盾とを描いた人間ドラマの傑作とされる。……だが、中学生くらいで読んでも、人間ドラマを理解するのは2周目くらいなのではなかろうか? では、最初は何を目当てに読むかといえば、エロシーンである。作中には2回ほどレイプシーンが登場するわけだが、大人になればさほどではないものの、中学生には結構過激なのでは(しかも、処女レイプだし)。このマンガを「人間ドラマが……」とか語るヤツは、まず疑え。 ■『マンガ嫌韓流』山野車輪  一時は、ネトウヨ……いや、保守的な意見を持つ人々の必読書となり、作者が(ど田舎に)家を建てるほど儲けた作品。歴史観というものが多面的なものである以上は、ここに書かれていることも事実である。だからといって、頭からすべて信じ込むのも危険極まりない。もしも適切な指導が行われるなら、まずは「こういう意見もある」とした上で、自分自身で調べ、意見を構築する訓練を行うよい教材である。というか、『はだしのゲン』と一緒に、この本も配架しておけばいいんじゃないか? ■『ロボット三等兵』前谷惟光  町の科学者・トッピ博士が作った人間型ロボットが、陸軍に入隊。三等兵として大活躍や大失敗を繰り替えす、ギャグマンガの名作。前半では、大陸での日本軍と中国軍との戦いが描かれるのだが、中国軍の描かれ方がものすごくステレオタイプ。ドラを鳴らすし、ラーメンを売る。おまけに、背中にくくりつけているのは銃じゃなくて傘(初期の国民革命軍は銃が行きわたらず、傘を背負っていたという史実を戯画化)。トッピ博士も原爆を作ろうと軍に提案したり、物騒すぎる子ども向けマンガである。 ■『サハラ 女外人部隊』平野仁、小池一夫  舞台は1970年代初頭。ポルトガル領アンゴラを舞台に、独立派ゲリラと戦う女外人部隊を描く。本筋とは別に、独立派ゲリラの黒人は、ほとんど野獣か狂犬の扱い。女とみれば、戦争そっちのけで襲いかかってくるのだ(それを承知で、ヒロインたちが身体を武器にピンチを切り抜ける展開が何度も……)。双方ともに「戦争犯罪? ナニソレ?」というリアルな戦争観は、ある意味、新鮮(民間人は捨て駒扱い)。なお、小池先生によれば「女外人部隊は実在した」とのこと。マジか? ■『黒旗水滸伝 大正地獄篇』かわぐちかいじ、竹中労  時は大正時代。浅草十二階下、沖縄、上海、満州へと舞台を変えながら、描かれるのは右と左の革命バカの大騒ぎ。右翼の頭目・杉山茂丸が連れ歩くのは、車夫に身をやつした徳田球一。バカ騒ぎの中で、ひとり摂政宮暗殺へと牙を研ぐ、孤高のテロリスト・難波大助と無数の怪人物たちが、世の不条理を破壊線と我が道をいく物語。なお「昭和煉獄篇」に続く予定だったらしいが、未完。同コンビの『テロルの系譜』との併読もオススメ。「楽しいデモ」とか、陳情、署名活動で世の中が変わると思っている現代の左右への疑問が解消される名著。 ■『戦場まんがシリーズ』松本零士  そもそも、戦争ってそんなに悲惨でやりたくないものなのか? 戦争をやりたくないからと、武器を捨てて無防備にしていればよいなんて考えるのは、よほどお気楽な人だけである。今後、戦争に巻き込まれないためには、核兵器も含めてハリネズミのように武装しなくてはならないかもしれない。それに、これから先、人類が全地球上から戦争を消滅させるためには「世界革命戦争」か「最終戦争」か、どちらにしても相当な血が流れることになるだろう。大多数の人は不条理な運命の中で死ななくてはならないハズ。死に方というものを考える上で、このシリーズは役に立つのではなかろうか。もっとも、こんなにカッコよく死ねるはずもないけどね。 (文=昼間たかし)

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