過去にアイドル活動の経験もあったシンガーソングライターの女子大生・冨田真由さん(20)が東京都小金井市で刺されて重体に陥った事件で、アイドルを売り出している事務所関係者は警戒感を強めている。 事件翌日に行われる予定だったアニメ好きアイドルグループA応Pや、アニソン歌手Rayらの握手会やお渡し会が続々と中止になり、アイドルグループ仮面女子はイベント時の手荷物検査実施を発表。アイドル界はファンとの近い距離を売りにする傾向が強く、一昨年の岩手でのAKB48握手会で、ノコギリを持った男がメンバーらを襲撃した事件の恐怖感が再燃中だ。 冨田さんは5月21日、予定していたライブ会場の前で、京都から上京したファンの会社員・岩埼友宏容疑者(27)に襲われ、約30カ所もナイフで刺されて重体となった。問題は、冨田さんが事件12日前の9日に武蔵野署を訪れ、容疑者の名前を挙げて「Twitterで執拗な書き込みがされている」と、ストーカーの疑いを相談していたことだ。しかし、同署はこれを「ストーカー相談」としては扱っておらず、事件を食い止めることはできなかった。アイドル事件というよりストーカー事件という要素も強いのだが、それでもアイドル業界関係者の間では警備の問題が浮上している。 「有名アイドルは金をかければいいですけど、冨田さんのようなブレーク前のタレントや、局地的な人気を土台にする地下アイドルなんかには、そんな費用ないですからね」と話すのは、地下アイドル情報雑誌「Top Yell」(竹書房)のライターだ。 「地下アイドルは自宅から電車でイベント会場まで通いますし、駅からも徒歩で会場に向かうのでスキだらけ。イベント時の警備員を増やしても、今回みたいに道中を狙われたら防げません。ストーカーみたいなファンがいても、基本は放置。直接、金になること以外はノータッチというスタンスの事務所も少なくないんです」(同) ただ、いくつかのグループでは最近、ファン出身の防犯アドバイザーがいるという話もある。 「アイドルオタクは同好の仲間同士で情報を共有する力があって、オタク同士のほうが行動は把握しやすいです。危なそうなファンを見つけるのも関係者より早いし、SNSの動きも細かくチェックしている。ファンの住所なんかも把握していたりしますから、サイコパスみたいなファンによるトラブルを防止するのに役立っています」(同) 蛇の道は蛇というわけで、オタクがオタクをストップするアドバイザーとなっているわけだ。 「ただ、問題はアドバイザーであることがバレると、ファン仲間から外されるので、あくまで極秘。公にはできないという面があるので、そのオタクをこっそり雇うまでの方法がなかなか難しい。あるアイドル女性はマネジャーもいないので、時給1,000円の『おじさんレンタル』を利用して、マネジャーに扮したボディガードになってもらっているとか言ってました」(同) また、この機に乗じて各事務所には警備業界からの営業も増えているという。警備業はかつてヤクザのアルバイト的なビジネスとして存在していたこともあったが、近年は暴力団排除の機運で、警察OBがその仕事を奪取。警察に持ちかけられた警護の相談の情報がこちらに流れて、利益を生む仕組みになっているという話もある。 都内の有力探偵業者トータルリサーチに聞いたところ「すでに数社のアイドルプロダクションから、変態ストーカー対策で相談を受けていますが、警察が怠慢、警察OBによるアイドル警護のビジネスが成り立ってしまう」というから、ストーカー放置の裏側にもそうした事情があるとすれば怖い話。いずれにせよ、地下アイドルの危機は「地下警備産業」のニーズを掘り起こしているようだ。 (文=ハイセーヤスダ/NEWSIDER Tokyo)『「好意が悪意に変わる時」アイドルへ・・・綴った心の闇(16/05/23)』(ANNnewsCH/YouTube)より
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冨田真由さん刺傷事件で、地下アイドル界に“警備特需”「オタク同士に監視させる」例も
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