余震も続き被害が広がる熊本地震では、壊れたインフラにより支援物資も届かない非常事態となっている。八代市の避難所である小学校の体育館には、プロレスラーの幸村ケンシロウ(51)がいたが、救援の負担を軽減する意味もあって、雨がやんだのを見計らい、自力で親族宅へと移った。 「14日、最初の余震がきたときはだいぶ揺れましたが、大丈夫でした。ところが2度目の本震は大きく、家のモルタルが剥がれ落ちました。現在、市内の約2万人に避難警告が出て、家族と共に避難したんです」 同市は14日21時ごろの前震が震度5弱だったが、16日未明に6弱のさらに強い揺れに襲われた。市役所も庁舎が損壊し、九州道をつなぐインターチェンジ周辺も不通で、支援物資の到着も遅れている。 同市出身・在住の幸村は1990年代から西日本プロレスで九州のプロレス人気を担った後、2009年からは、子どもたちにプロレスを通じての社会教育「教育プロレス」を推進してきた。それだけに、行政の動きを心配する。 「断層が南北にあって、震源が熊本市からこの八代市方面へと南下しているようで、予断を許さない状況です。ただ、避難には水、食糧の不足や衛生面の問題があり、体調不良や病気の問題も発生しています。まずは冷静な判断と迅速な行動が重要ですが、市役所が崩壊しかけていて、役所としての機能がなくなっていることも不安が大きいです」(同) その市役所に取材してみたところ、職員自身も自宅を失っていた。 「前震で家屋が損壊して部屋がグチャグチャになり、2度目の本震では破損が広がって、屋根の瓦も落ちて雨にずぶ濡れ。外壁も壊れてしまいました。現在、備蓄の飲食料が底をついてきています。支援物資があっても、空港の閉鎖や阿蘇大橋の崩壊などで避難所への物資の配送ルートが遮断された状況。行政としても、いま誰がどこに避難していて、何が必要なのかも把握しきれてないです」(職員) 県は、災害時に支援物資を受け入れる地域防災計画として、熊本市のパークドーム熊本など3カ所を広域防災活動拠点と定めていたが、今回の地震ではその3カ所とも被害を受け、物資の受け入れができなくなってしまった。熊本県は急遽、県庁などで受け入れを始めたが、インフラの復旧がないため大量の物資を抱え込んだままだ。さらに水道、電気、ガスのライフライン復旧も余震が多発している中では行えず、地震活動の今後も「予測できない」とされている中では、かなり長期的な被害となっていきそうだ。 そんな中、避難所の人々からは「残念なことに、身を呈して動いている人々がいるのに、エゴ丸出しで文句を言う被災者もいました」という声もあった。諸々の問題は東日本大震災で学んだことではあったが、その教訓も現実のパニックの中では生かすのは難しいのかもしれない。 (文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)プロレスリング求道軍公式サイトより
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【熊本地震】被災したプロレスラー・幸村ケンシロウが明かす現在「役所としての機能がない」
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