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「僕はISISが好きだ──」18歳の韓国人少年を“イスラム国”合流に導いた、孤独と疎外感の正体とは

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 イスラム国(ISIS)の実態が世界中に広く知られつつある中、韓国でも関連報道が日ごとに増えている。湯川遥菜、後藤健二両氏の人質事件については言うまでもない。自国や韓国人とは関連の希薄なニュースながら、ほとんどトップ扱いだ。その事件経過や背後関係は、ウェブメディアを中心に毎日のように報じられている。  ISIS関連の報道には国際情勢を読み解く記事が多いが、韓国と関わる事柄も多く取り上げられている。特にISISと合流したとされるキム君(18歳 ※本名は公開されていない)については、社会的なショックとともに、さまざまな臆測を呼んでいるようだ。  キム君は2014年の9月ごろから、Twitter上にアラーをたたえる文章を掲載。10月からは、イスラム国の戦闘員や、現地の人々が写った写真をアップロードし始めた。ある時には、「現代は男性が性差別を受ける時代。僕はフェミニストを憎む。だからISISが好きだ」というメッセージも残している。失踪する3カ月前には、イスラム国への憧憬を率直に表現することが徐々に増えていったとされる。  その後、キム君は、Twitter上でメッセージをやりとりしていたとある人物から、「トルコに行けば、ISISと合流できる」と教えられた。そして、現地コーディネーターと目される“ハサン”なる人物の連絡先を教えられたのち、今年1月に韓国をたった。  1月9日には、トルコから弟に向けて「ここは今、夜だ」という携帯電話のメッセージを残しているが、それが最後のメッセージとなる。韓国当局の調べでは、キム君は翌日10日にトルコ南中部の県都キリスから、違法タクシーに乗りシリアへ越境。失踪したのではなく、自らISISと合流し、連絡を絶っている可能性が高いそうだ。  なぜ、18歳の韓国人少年はISISに合流しようとしたのか?  韓国では、少年の謎に包まれた行動の動機を探るためにさまざまな角度から検証がなされ始めているが、真実は本人に聞くまで知る由もない。ただし、いくつかの報道から、キム君の韓国社会での生活が浮かび上がり始めている。  キム君は小学校で暴力を受け、3回にわたり転校。中学にもなじめず、入学早々から休学となる。その後、自宅に引きこもり、ほとんど外に出てこない生活を長く続けていた。そのせいか、キム君を知る人はほとんどいない。両親ともメモを使って話すほど、外部との接触を徹底的に拒んでいたという。その、キム君と外の世界をつないでいたのは2つ。ひとつは、最後にメッセージを受け取った弟。失踪するまでの3カ月間、キム君は1666回にわたって携帯電話で通話したり、メッセージを送ったりしているが、そのうち1657回は弟にかけたものだった。そしてもうひとつが、イスラム国メンバーとされる人々とのやりとりだった。  自宅に引きこもった少年は、昨年3月からPCで“イスラム”、“ISIS”という単語を、延べ517回にわたって検索していた。Twitterなどオンラインで“友人”になったイスラム国メンバーらしき人物たちは、キム君にとても優しく接した。両者が“Brother”と呼び合うようになるには、そう長い時間はかからなかった。 「Brother, Just I say I want to join ISIS」――。  キム君から、そんなメッセージが発せられていたことが、後に明らかになっている。出発前にはすでに、ISISに合流すると固く心に決めていたのだろう。ある日、キム君は「トルコ旅行に行きたい」、そして「帰ってきたら検定試験(資格試験)を受ける」と、自ら両親に話を切り出した。外の世界とのつながりを拒んでいた息子の前向きな言葉に、両親は喜び、旅の手助けをすることを厭わなかった。家計は決して潤沢ではなかったが、息子に起こっている変化を逃したくない一心で資料を集め、個人ガイドを手配した。そして出発から数日後、息子は行方をくらました。キム君の両親は、「ISISに惹かれていることに気付けなかった」と、深く後悔している。  多くの韓国メディアは、残されたキム君の足跡から、韓国社会で孤独感を感じており、自分を認めてくれる居場所になるかもしれないISISに、深く惹きつけられたのではないかと推測している。  ISISと接触する若者が多いフランスで、ジャーナリストとして活躍するアンナ・エレナ氏も、イスラム国に惹きつけられる青年たちの中に、同様の疎外感と孤独感を見いだしている。彼女は、著書『Dans la peau d'une djihadiste’(直訳・ジハーディスト女性の身代わりになって)』の中で「淋しさに打ちひしがれている青少年たちは、自身に関心を寄せてくれるISISのメンバーに簡単に惹かれてしまう」と語り、フランス社会のひずみを暗に示唆した。  現在、ISISには国籍や人種を問わず、さまざまな国の若者たちが参加していることがすでに広く知られており、今後も増え続けるだろうと懸念するメディアや専門家も少なくない。もし、世界中の若者がISISに合流する動機のひとつに、社会に対する孤独感や疎外感があるならば、看過できない問題ではないだろうか。  朴槿恵政権は昨年、反イスラム国を鮮明に打ち出す欧米諸国に歩調を合わせる意を明らかにしている。一方で、足元の韓国社会では少子化、世代間格差など若者の生にとって不利な条件が整いつつある。そこから第2、第3のキム君が生まれないとは、誰も断言できない。実際に、欧米のメディアによると、キム君のほかにも2名ほどの韓国人がイスラム国に所属しているとの報道もある。ゆくゆく、韓国が自国民に銃を向けるという最悪のシナリオさえも、ただの妄想ではなくなってきた。  インターネットと孤独感に国境がない以上、日本でも同じような問題は容易に起こりうるかもしれない。テロに屈しないという言葉の意味は一体何なのか? その内実については、熟慮すべきだろう。 (取材・文=河鐘基)

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