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Channel: 日刊サイゾー
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死も覚悟するほどの腹痛を治した、北朝鮮“奇跡の”鍼治療「100本のぶっとい針が……」

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ホテル内の医療施設で注射。看護師さんは美人でした。
 こんにちは。北朝鮮ライター(北朝鮮リア充研究家)の安宿緑です。  前々回(2010年11月)の訪朝で、私は病気になってしまいました。連日、立っていられないほどの激しい腹痛に見舞われ、下痢が止まらず、食事もすべて戻してしまう状態。これでは取材どころか、外出もできない。病状は日に日に悪化し、もはや日本に戻ることすら危うくなっていきました。  そのためホテル内の病院にかかり、そこで錠剤投与を5回ほど、その他栄養補給として注射、点滴など複数回の治療を受けました。海外医療保険に入らずに来てしまったため金額におびえましたが、幸い北朝鮮は無償医療のため、治療費を請求されることはありませんでした。
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自室でまで点滴を受けるありさま。
   とはいえ、どれもこれもまったく効かず。点滴なんて、ホテルの部屋に来てもらってまで打ったんですけどね。それでも、なんとか歩けるようになるまでは回復しましたが、発作的な胃痛はどうしようもなく、痛みが再発しないように祈るしかない状態でした。  そんな中、ある一般人が住むマンションを訪問させてもらうことになりました。依然、体調は万全ではなく、トイレと居間を往復するばかりで、ついにはその場で倒れ込んでしまいました。  住人たちの「一体こいつは何をしに来たんだ?」という空気が突き刺さり、さらに内臓がキリキリ痛みました。  「このまま北朝鮮で死ぬのかな……」とボンヤリと天井を見つめていると、シャレにならない状況だということを悟ってくれたのか、住人たちは即座に医師を連れてきてくれました。  北朝鮮では基本的に、マンション1棟につき一人は医師が居住しなければならないという規則があるとのことで、運良く隣の隣に医師が住んでいたのです。 ペク医師「薬も点滴もダメだったのか? うーん……」  私を診察したペク医師は少し悩んだ後、「じゃあ、これしかないな」と言って、カバンの中から直径1ミリはあろうかと思われる、ぶっとい鍼を出してきました。もはや言葉を発する気力もなかった私は、不気味に光る針先を、もうどうにでもなれという思いで見つめました。  ペク医師は手際よく、鍼を私のヘソ周りと、胃腸のツボが集中しているといわれる膝に刺していきました。その数、およそ100本。  針山のようになった腹と膝を見ながら、私はポツリとつぶやきました。 「いま、地震が起きたらどうしよう」  すると、私を見下ろしていた面々が一斉に笑いました。 「朝鮮では地震なんてないよ」  地震の少ない朝鮮半島、少なくとも皆が生きてきた間には地震を経験したことはないそうです。きちんと調べてみないとわかりませんが、過去100年間まともな地震は起きていないとも。 「日本ではしょっちゅう地震が起きています」と私が言うと、「怖い。絶対に住みたくない」と、皆一様につぶやいていました。  まあ一説では、北朝鮮の聖山・白頭山噴火間近といわれているので、もうすぐ地震どころじゃ済まなくなるんでしょうけどね。  その晩は、そのままマンションで夜を明かしました。  そして翌日。なんと、胃腸が痛くない! 下痢もない! むしろ食欲が止まらず、出されたご飯をモリモリと食べる私。絶好調でした。何をしても取れなかった痛みが、鍼で何事もなかったように消えるとは……。  ホテルへ戻るとき、どうしてもお礼を言いたかった私はペク医師を連れてきてもらい、マンションをバックに一緒に写真を撮りたいとお願いしました。命の恩人が住むマンションですからね。日本に戻ったらその写真を手に、思い出話をするつもりでした。  私のカメラは充電が切れてしまったので、住人に撮影と現像を頼みました。  しかし後日、マンションを訪ねて写真を受け取ると……。
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 なんだか、キラッキラまぶしいんですけど……?  見ての通り、背景がマスゲーム会場に差し替わっていたのです。「アリラン公演」をイメージしたものだそうですが、よくある観光地のプリクラのような強引さです。 私「ちょ……この背景はないでしょ! マンションをバックにしたから意味があったのに!」 住人「何言ってるの! アリラン公演をイメージした、栄えある背景なのよ。一番人気なの」  そうか、そう来たか……。そういえば、現像所に「背景タイプA」とか「背景タイプB」とか選べる欄がありました。ご丁寧にも一番人気の「背景タイプ:アリラン」を選んでくださったのですね。いや、ある意味素敵だとは思いますが、被写体が我々であるという点が問題です。  ともあれ、ペク医師のおかげで無事日本に戻ることができました。本当に感謝です。
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 ちなみに、こちらはペク医師が開発されたという注射薬「アトロクソフィリス」。いわくEUにも輸出されているそうですが、個人的にはペク医師の鍼のほうが効きそうな気もします。               ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

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