日本出版販売株式会社が11月26日を「いいふろくの日」と発表するなど、すっかり市民権を得たグッズ付き雑誌。その先駆け的存在といえるのが、ブランドムックを多数販売する宝島社だ。今年の10月にはムック本の販売部数が累計7,000万部を突破したというから驚きだ。出版不況が叫ばれる中、ひとり勝ちを続ける宝島社に、今、ある異変が起こっているという。 「HPの採用情報を見てもらえればわかるのですが、どの雑誌も定期的に人員を募集しているんです。うちは基本的にファッション誌の会社ですから、ファッション誌をやりたいっていう強いあこがれを持った人が来るのですが、その仕事量の多さにみんな音を上げて、すぐに辞めていく人が多いんです。多いときは月に10人くらい辞めてますね」(宝島社関係者) 確かに、11月26日現在、確認できるだけでも「steady.」「MonoMax」「mini」と3誌も募集している。 「うちは、基本的に正社員と契約社員の差というのは、あまりないんです。契約でも保険も入ってくれますしね。ボーナスが違うくらいですかね。ただ、仕事量はまったく同じです(苦笑)」(同) ここ数年、どの出版社もこの不況下で採用を縮小していく中、ファッション雑誌における市場占有率はもちろんのこと、雑誌全体においても市場占有率トップを誇る宝島社は、まったく違う路線を進んでいるという。 「宝島は、あまり新卒採用に重きを置いてないんです。中途採用のほうが多いんじゃないでしょうか。実際、契約から社員登用という形がかなり多いですね。アルバイトから契約、契約から社員になった人はたくさんいますよ。アルバイトから編集長まで上り詰めた人もいるくらいですからね。基本的なスタンスは『イヤなら辞めろ。代わりはいくらでもいる』です。最近だと、会社の売上が下がってきてるので、一人あたりの年間売上ノルマがあって、それを達成しないとボーナスが下がるという、完全歩合制みたいな形が導入されました。ただ、基本的に外注も使わない、自分で編集もライティングもやる会社なので、実力はかなりつくと思いますよ」(同) 先日、大手出版社のひとつ、小学館が大量に中途採用をしたが、やはり宝島社からの採用が複数人いたという。 「宝島社で数年仕事をしていたというのは、かなりの“ウリ”だと思いますよ。あそこは、本誌だけでなく何冊もムック本を同時進行してますからね。他社に行ったら、あまりにも仕事の“時間軸”が違いすぎて驚きました。とにかく立ち止まらない会社なので、常に新しいことをして、それについてこられない人は容赦なく切り捨てていくって感じですね」(元・宝島社編集スタッフ) 最近も佐賀県と共同事業を行ったり、ファッション雑誌「sweet」の公式ショッピングサイトをオープンさせたりと、手広く事業を拡大している感がある同社。その陰には、幾人もの編集者たちが去った形跡も確かにあった。宝島社 公式サイトより
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出版不況下“ひとり勝ち”の宝島社から人材大量流出のワケとは?
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