10月末、土砂災害に見舞われた伊豆大島で、ようやく被害状況の実態調査が始まった。約1,800人態勢の捜索で、これまで34人の死亡、7人の行方不明、被害住宅100戸以上が判明している(1日現在)。そんな中で「貸し別荘ビジネス」の行く末を不安視する人々もいる。 「亡くなっている方もいる中で、商売の心配を大きな声で言えないのですが、投資が失敗だったのではないかと不安な人も少なくないんです」 こう話すのは、都内在住の50代会社員男性。一昨年、大島に別荘を2,000万円ほどでローン購入。観光用に平日1泊2万円で貸し出して、初年度は目標の売り上げを達成できたというが「今回の台風で建物自体にダメージを受け、修繕費用で大赤字。ローンを返しながら利益を出すはずが、今後の利用客が減少すれば、支払いが増えるだけという最悪の状況になってしまう」と話す。 近年、貸し別荘はサラリーマンの間でちょっとした副業として注目されているが、そんな中で大島は「穴場だった」と前出男性。 「昔に比べ観光客が減って、格安で物件を購入できるようになったので、私のような平凡なサラリーマンでも手が出せたんです。老後は、そこに住むのもいいと思って購入した」(同) 昨年度の観光客数は約21万人、確かに40年前のピーク84万人から見れば激減だが、それでも島の収入の7割を担うのが観光で、最近は観光協会や船舶会社が協力し、島の魅力をアピールするキャンペーンで、さらなる観光客の増加を見込んだばかりだった。 「島内を巡っても1~2日あれば十分遊べるし、短い旅行でもマリンスポーツや釣り、キャンプなどを楽しめるんですが、今回の被害で、災害の場所というイメージがついてしまうのが怖い」(同) 実際、台風が接近した15日夜、川島理史町長が出張先の島根県でキャバクラ遊びをしていたことで、危機管理意識の低さが露呈した。避難命令すら出なかったことは、世間から批判を浴び、今後の観光客減少は必至だと各紙でも報じられている。 伊豆大島の観光協会に問い合わせても「このような時期なので、島に行きたいと問い合わせがあった場合は『見合わせたほうがよろしいのでは』と答えています」と話しており、現状では集客は絶望的。 「同じ別荘オーナーや旅館の経営者とも話しているんですが、みんな復興の補助金でも出してもらわないと壊滅寸前です」と前出男性。 また、地理研究家からは、今回被害が拡大した理由を「大島町では山の麓のあたりまで人家が密集し、土石流が襲う危険地域になっている」という指摘があり、その麓こそまさに貸し別荘がたくさんある場所だったことも判明。前出男性の別荘も同様で「山の麓は海際より位置が高いので景色がよいからと購入を決めた」ことが仇となった。 儲けるどころかマイナスに。1986年の三原山大噴火からも見事に立ち直って見せた島の観光産業は、今回も復活するだろうか? (文=ハイセーヤスダ)伊豆大島(「Wikipedia」より)
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土砂災害の伊豆大島で観光産業に壊滅的被害──流行の「貸し別荘ビジネス」に大打撃も
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