住民の猛反対が起こっている習志野市屋敷の大型パチンコ店建設問題で、出店する株式会社マルハンが、市の定めた「開発事業指導要綱」に違反して建設を強行していたことが分かった。 同要綱によると事業者が開発事業を行う場合、習志野市建設指導審査会の合意を得た後に建築確認申請をするものと定められている。本来であればマルハンは4月26日の審査会を経て申請書を出さなければならないところ、そのはるか前の4月4日に民間の検査機関に申請書を出し、5月22日に工事を始めてしまったのだ。 この違反については着工前、住民が宮本泰介市長を通じて抗議をしていたが、マルハンの韓裕代表は「手続きに逸脱したとのご指摘を受け、今後このような対応がないよう努める」としながらも「スケジュール上の必要性」と、あくまで自社都合を主張、予定の見直しはされなかった。これには「まさに、これがパチンコ企業のやり方だ」と、建設地の傍に住む男性は憤る。 「この要綱は破っても罰則がないので、確信犯としか思えません。マルハンはこれまでも地域住民に対して失礼な振る舞いが目立っていますし、今後、何か問題が起きても意に介さないといった、強硬な態度でやり過ごすつもりでしょう」(同) そのひとつが、一部住民が敷地内の木に、県が重要保護生物に指定しているコチドリの飛来を確認したことだ。男性によると「営巣して産卵が確認された場合は、鳥獣保護の法律で、秋ごろの巣立ちまで工事着工を延期することになる」として、確認の立ち入り調査を求めたが、マルハンはそれすらも却下したという。 5月22日の着工当日、現地に行ってみると、なぜか真っ先に営巣の指摘があった木がなぎ倒され、そこから十数羽の鳥たちが飛び立った。これがコチドリかどうかは確認できなかったが、重機が草木を踏み潰している間も、鳥たちはその場に降り立って鳴き声を上げ続けていた。 このままであれば、業者の思い通りに駐車場777台を擁する大型パチンコ店が住宅地に建てられてしまうため、住民は工事の進め方にも協定を締結したいと申し入れた。また、近隣の障害児童の福祉施設への説明会なども要望していたが「マルハンは『検討する』と言っては逃げるだけ」と同男性。
「福祉施設には工事の前日になってマルハン担当者が挨拶に来たそうですが、“パチンコ店ができても問題がない場所だ”という一方的な主張を述べるばかりだったそうです」(同) 建設地の周辺はかつて工場が建っていた工業用地であるため、パチンコ店の建設自体は合法なのだが、近隣に学校や障害者施設が囲むように建っており、見回しても住居やマンション、畑しか見当たらず「実質、住宅地域という認識」とする住民は多い。同市には風俗営業に関する規制条例があったが、工事に反対する署名運動などが起こっている渦中の4月、市は唐突にこの条例を廃止、住民からは行政と業者の癒着を疑う声も上がっている。 一部の市議もこれには「習志野市にはまちづくり憲章など建設反対に適用できるものもあるのに、最初から無抵抗で住民より業者を優先するなんて、暴政としか言いようがない」と異議を唱えている。 また、若い住民有志を中心に急きょ立ち上がったパチンコ店問題連絡会は、6月15日18時より市民プラザ大久保にて「大型パチンコ店建設問題を考えるシンポジウム」を開催。まちづくり問題に詳しい、早稲田大学法科大学院教授の日置雅晴弁護士も出席する。 「行政と業者が好き勝手にやれてしまうのが現状。今この問題を真剣に考えないと、私たちの住環境はどんどん壊されてしまう」と、連絡会のメンバーはパチンコ店開業後もこうした訴えを続けていくという。