![遺体の半分をオオトカゲに食べられ……美男美女ばかりが殺されるタイの「死の島」で、6人目の犠牲者の画像1]()
自殺として処理されたエリーゼ・ダルマーニュさん。新興宗教との関係はいかに?
タイ南部のリゾートアイランドとして知られ、日本人観光客も多いタオ島だが、最近「死の島」という悪名が定着しつつある。
2014年以降、外国人観光客が不慮の死を遂げる事件が立て続けに起きており、その犠牲者がすべて若い白人の美男美女であることから、国際的な話題となっているのだ。
そして4月28日、6人目の犠牲者が出たことが明らかになった。
タオ島で、バックパッカーとして同地に滞在していたベルギー人女性、エリーゼ・ダルマーニュさん(30歳)が遺体で発見されたのだ。
地元に生息するオオトカゲが、ジャングルと海辺を行ったり来たりしているのを不審に思った住民がその後をつけたところ、岩場で半分ほど食い荒らされた遺体を発見したという。
警察によると、遺体はシャツかショールのようなものを身に着けた状態で、付近には空の燃料瓶が転がっていた。
遺体の損傷の激しさから身元の特定は困難を極めたが、歯型の照合や過去に撮影したX線写真などから、エリーゼさんと判明した。
警察は、エリーゼさんが森で首吊り自殺をしたのち、遺体がオオトカゲによって運ばれてきたものだとして処理した。
しかし、エリーゼさんの死をめぐっては、自殺では説明のつかない不審な点が多い。
エリーゼさんは2年半にわたってアジアを中心に放浪していたが、間もなくベルギーに帰国予定だった。4月17日にスカイプで母親のミシェルさんに電話をかけた際には、当時いたパンガン島を19日に離れると話していたという。
ところが、彼女がその後に乗ったのは、本土行きではなく、パンガン島から北へ約40キロの場所に位置する、タオ島行きのフェリーだった。しかもタオ島で泊まったホテルでは、なぜか「エリーゼ・デュブイ」という偽名でチェックインしているのだ。エリーゼさんが、何者かから身を隠そうとしていた可能性もある。
そしてその夜、さらに不可解な出来事が発生する。彼女がチェックインしたホテルで原因不明の火災が発生し、エリーゼさんの宿泊していた部屋も全焼してしまったのだ。
彼女はジャングルの中を2.5キロも歩いて避難し、別のホテルに再びチェックインしている。
彼女はこのホテルで、24日にバンコクに向かうための船とバスの通しチケットを予約。しかし、彼女がそのチケットを使用することはなく、28日に遺体で発見された。ただ、彼女が乗船予定だった24日のタオ島発の船には、なぜか彼女の手荷物だけが載せられていたという。
偽名でのチェックイン、謎の火災、荷物だけが乗せられた船……。まるでミステリー小説のようないくつもの謎だが、気になる点がもうひとつある。エリーゼさんはパンガン島で、インドのサイ・ババを信奉する新興宗教のグルを自称するドイツ人男性、2人の女性と同居生活を送っていたことがわかっているのだ。ただ、この新興宗教について、警察がどの程度調べを進めたのかは不明である。
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岩場で発見されたエリーゼさんの遺体。約半分はオオトカゲの餌となっていた
不審点が放置されたまま自殺と断定した現地警察に対し、エリーゼの地元ベルギーでは、親族らが捜査のやり直しを求める運動を展開。国際世論の関心も集まったことから、警察は7月4日、この事件を洗い直す特別班を編成したばかりだ。
このほか、国際的なニュースとなったのは、14年9月に、20代前半の英国人男女が浜辺で殺害された事件だ。2人は裸で、女性には強姦された形跡があったという。その後、地元警察はこの事件の犯人として、当時浜辺で酒盛りをしていたミャンマー人の出稼ぎ労働者2人を逮捕している。一審と二審で死刑判決が出ているが、両者ともに容疑を否定。取り調べで拷問を受け、ウソの自供を強要されたと主張している。また、警察は初動捜査では、殺害された男性の知人で、事件後バンコクへ向かった別の英国人男性を容疑者としてマークしていたとも伝えられているが、この男性への取り調べが行われたのかどうかは不明だ。
また、15年の元旦には、フランス人男性(29歳)が宿泊していたバンガローで首を吊って死亡しているのが発見された。警察は自殺として処理しているが、遺体は両手を後ろ手に縛られた状態だったという。
同月、英国人女性(23歳)が死亡。警察は複数の抗生物質とアルコールの同時摂取による事故死としているが、やはり遺族は警察の捜査のずさんさに不満を述べ、他殺の可能性を主張している。
16年1月には、英国人男性(27歳)がプールで死亡しているのが発見された。警察は「事件性なし」と断定しているが、遺族らは「警察が事実を隠している」と批判している。
さらに今年3月には、ロシア人女性(23歳)がホテルから忽然と姿を消し、いまだ行方不明のままである。
これらの事件について、謎が放置されたままとなっている理由を、タイ在住の日本人はこう指摘する。
「観光産業に依存するタイの田舎は、治安悪化のイメージは地元経済の死活問題となる。そうした事情から経済界の圧力も働き、警察は解決困難な殺人事件が発生した場合、事故として処理するということが往々にしてあります」
地元経済を守るため、真実が島ぐるみで隠匿されていたとすれば、それこそミステリー小説の世界である。